──自然・食・マルシェ・旅と暮らしが重なる場所
ヴィソンに着いたのは朝10時前。
薪の匂いと、どこかで海鮮を焼いている香ばしい匂いが、まだオープン前の空気に混じっていた。

これから店が開いていくこの感じが、朝市やマルシェを思わせて、すでに自分好みだと感じていた。
見渡すと、広大な敷地の中にいくつものエリアが点在し、まさに小さな美しい村のようだ。
その奥には壮大な山々が広がっている。
所々に、子どもたちが思いきり走り回れる広場があって、空気が澄んでいて、思わず深呼吸したくなる場所だった。
子どもたちは走り出し、笑い声が広がる。
「幸せだな」と、頭で考えるより先に体が感じていた。
店先では、西日本の柔らかい言葉が自然に行き交っていて、
ああ、自分はいま確かに旅をしているんだと実感する。
人と土地の温度をちゃんと感じられる場所。
それが、僕の中でのマルシェの定義そのものだった。

ヴィソンは「観光地」じゃなかった

ヴィソンは、大きく分けて9つのエリアに分かれている。
けれど実際に歩いて感じたのは、
エリアを巡っているというより、一つの村を歩いている感覚だった。
案内図を片手に効率よく回る必要はなく、
気になった匂いの方へ、人の集まっている方へと自然に足が向く。
それぞれのエリアは独立しているのに、
どこかでちゃんとつながっていて、境界線がはっきりしすぎていない。
ここが、ヴィソンを「ひと通り見て終わる観光地」だと感じなかった理由の1つかもしれない。
マルシェヴィソンは“朝”がいちばん似合う
マルシェヴィソンに足を踏み入れた瞬間、
朝市や市場に来たときの、あの独特の高揚感を思い出した。
ミシュランシェフや一流パティシエも扱うような、
産地直送の野菜や果物が色とりどりに並び、
その横にはジャムやジュース、クッキーなどの加工品。

「買う」より先に、「見ているだけで楽しい」。

その合間には魅力的なキッチンカーが点在し、
ベンチも多く、買ったものをその場で味わえる。

ヨーロッパの小道のようなつくりの中に、
鯛焼き香肌屋やフルーツ大福の弁財天が並んでいるのも、歩くたびにワクワクさせてくれた。


正直、このマルシェヴィソンだけでも、
普通の道の駅の3倍以上の濃さと規模感がある。
しかもそれが、無理なく、自然にそこにある。
もし行くなら、朝がおすすめだ。
店が開き始め、人が集まり、匂いが立ち上がっていく時間帯は、
この場所の空気をいちばん濃く味わえる。
スイーツヴィレッジは「甘い」だけじゃない

スイーツヴィレッジは、パティシエ・辻口博啓さんが全体をプロデュースするエリアだ。
けれどここは、ただ有名パティシエのスイーツを並べた場所ではなかった。
和ヴィソンエリアにある専門店の麹、味醂、酢、醤油、味噌を使用した発酵フィナンシェがあったりとヴィソン内での循環があり、ヴィソンにより奥行きを持たせていた。
ショコラ専門店の横にはマカロン、コンフィチュール、ケーキまで揃う広い店舗。

一つひとつに辻口さんの世界観が反映されていて、
「どれを買うか」より、「どんな空間にいるか」を楽しんでいる感覚に近い。
印象的だったのは、そのすぐ横にハウス栽培されたカカオがあったこと。

原材料から目に入るこの体験が、
スイーツを“完成品”としてではなく、
食材から捉えさせてくれる。
甘いものが好きな人はもちろん、
そうでなくても、ここはきっと面白い。
和ヴィソンで感じた、日本の余白
和ヴィソンには、日本を象徴する調味料や食材の専門店が、
それぞれ独立した店舗として並んでいる。
お酢、味噌、醤油、味醂、出汁、漬物、昆布、鰹節、海苔、米……
数えきれないほどの“日本の基本”が、
主役として丁寧に扱われている。

どの店も老舗感がにじみ出ていて、
店の横には大きな樽が置かれていたり、
店内で実際に発酵が行われていたりする。

「本物感が凄い」という言葉が、そのまま当てはまる空間だった。
それでいて堅苦しさはなく、
きゅうりの一本漬けをかじりながら、
おにぎりを頬張れるような気軽さもある。
日本の食文化を“学ぶ”場所というより、
日本の余白を味わう場所。
そんな表現がしっくりきた。
サンセバスチャン通りは、通り抜けるだけで楽しい
サンセバスチャン通りは、他のエリアと比べるとコンパクトだ。
けれど、スペイン・ピンチョス世界大会で優勝したシェフによる
日本初出店の店があったり、
バスクチーズケーキを食べ歩きできたりと、
短い距離の中にしっかりとした個性が詰まっている。

腰を据えて滞在するというより、
ふらっと通り抜ける中で
「これもいいな」と思わせてくれる存在。
ヴィソン全体の中で、良いアクセントになっているエリアだと感じた。
なぜヴィソンが「ど真ん中」だったのか
自然、食、マルシェ、旅と暮らし。
ヴィソンには、それぞれを主張しすぎることなく、
無理なく重ね合わせる空気があった。
テーマパークのような分かりやすさはない。
だからこそ、
刺さらない人には刺さらない場所かもしれない。
けれど、
市場や朝市が好きで、
自然の中で暮らす感覚に惹かれて、
旅と日常の境目が曖昧な時間を大切にしたい人には、
きっと深く刺さる。
こんな人にはおすすめ
観光地を制覇するより、歩いて・立ち止まって・迷う時間が好きな人
道の駅や朝市、マルシェの空気にワクワクする人
子どもが走り回る姿を見て、心がほどけるタイプの人
正直おすすめしない人
「ここを見たら次」という効率重視の人
テーマパークのような分かりやすい演出を期待している人
滞在時間を最短で区切りたい人
まとめ|ヴィソンは、心の速度を落としてくれる場所
ヴィソンは、何かを急いで消費する場所ではなかった。
歩く速度が自然と落ち、
匂いや音、人の声に気づける場所だった。
気づけば、
「こういう世界に、時間とお金を使って生きたい」
そんな自分の価値観を、静かに再認識させられていた。

翌日に伊勢神宮、地中海村へも行っているため良かったらこちらの記事も観てみて欲しい。



